社会保険適用促進手当とはQ&A

社会保険適用促進手当に関するQ&A

 

■制度について

Q1.「年収の壁・支援強化パッケージ」はいわゆる「年収の壁」に関する当面の対応策

とのことですが、どのような課題があるのか。

A1.厚生年金保険及び健康保険(以下「社会保険」という。)においては、会社員の

配偶者で一定の収入がない方は、被扶養者(20歳以上60歳未満の配偶者の場合は、

国民年金第3号被保険者となります。)として、保険料の負担が発生しない。

 

▼こうした方の収入が増加した場合、

(1)厚生年金保険の被保険者数が常時101 人以上(1)の事業所で働く短時間労働

者などの場合は、年収 106万円以上(2)となり、厚生年金保険・健康保険に

加入するか、

(2)厚生年金保険の被保険者数が常時 100 人以下の事業所で働く短時間労働者など

の場合は、年収 130 万円以上となり、国民年金・国民健康保険に加入するか、

いずれかの形で、被扶養者(第3号被保険者)でなくなり、社会保険料の負担が発

生することとなる。

 

保険料負担が生じると、その分手取り収入が減少するため、これを回避する目的

で就業調整する方がいる。こうした方が意識している収入基準(年収換算で

106万円や 130 万円)がいわゆる「年収の壁」(「106 万円の壁」や「130 万円の壁」)

と呼ばれている。

このような社会保険制度上の収入基準のほか、企業が支給する配偶者手当に収入

要件がある場合も、就業調整の要因になっていると指摘されている。

※1 令和6年(2024 年)10月からは、常時 51 人以上となる。

※2 所定内賃金(残業代、賞与、臨時的賃金を含まない)が月額 8.8 万円以上であることが短時間労働者の適用要件の1つとなっており、106 万円は年収換算した参考額。

 

Q2.「社会保険適用促進手当」とは何か。

A2.短時間労働者への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入する

にあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給するもの。

今般の社会保険適用促進手当については、社会保険料負担の発生等による手取り

収入の減少を理由として就業調整を行う者が一定程度存在するという、いわゆる

106万円の壁」の時限的な対応策として、臨時かつ特例的に労働者の保険料負担

を軽減すべく支給されるものであることから、社会保険適用に伴い新たに発生した

本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・

標準賞与額(※)の算定に考慮しないこととした。

また、事業所内での労働者間の公平性を考慮し、事業主が同一事業所内で同じ条

件で働く他の労働者にも同水準の手当を特例的に支給する場合には、同様に、本人

負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準

賞与額の算定に考慮しないこととした。

 

Q3.「社会保険適用促進手当」は政府から労働者に支給されるのか。

A3.社会保険適用促進手当は、あくまでも事業主が労働者に対し、労働者の保険料負

担を軽減するために自らの判断で支給するものであり、政府から労働者に支給されるものではない。

 

■対象者について

Q1.今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)は、どのような方が対象

となるか。

A1.今回の措置は、新たに社会保険の適用となった労働者であって、標準報酬月額が

10.4万円以下の者が対象となる。支給対象者は特定適用事業所()に勤務する短時間労働者に限られない。

また、事業所内での労働者間の公平性を考慮し、事業主が同一事業所内で同じ条

件で働く、既に社会保険が適用されている他の労働者にも同水準の手当を特例的に

支給する場合には、同様に、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の

算定に考慮しない措置の対象となる。

※ 厚生年金保険の被保険者数が常時 101 人以上(令和6年 10 月からは常時 51 人以上)の事業所

 

Q2.労働者が既に社会保険に加入している場合は、今回の措置の対象外となるか。

A2.新たに社会保険の適用となった労働者と既に社会保険が適用されている労働者

との事業所内での公平性を考慮し、事業主が同一事業所内で同じ条件で働く、既に

社会保険が適用されている労働者に対し、新たに社会保険の適用となった労働者と

同水準の手当を特例的に支給する場合には、同様に、保険料算定の基礎となる標準

報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しない措置の対象となる。

なお、キャリアアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースについては、令和

5年(2023 年)10 月以降に社会保険の資格を新たに取得した労働者が対象のため、

同年9月以前に既に社会保険の資格を取得している場合は支給対象にならない。

 

Q3.同一事業所内の同じ条件で働く他の労働者にも同水準の手当を事業主が特例的に

支給する場合に、標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないとのことだが、

「同じ条件」「同水準」とは具体的にどのような場合を指すのか。

A3.事業所内で既に社会保険が適用されている労働者については、当該労働者の標準

報酬月額が 10.4万円以下であれば、事業主が保険料負担を軽減するために支給し

た手当について、本人負担分の保険料相当額を上限として標準報酬月額・標準賞与

額の算定に考慮しない措置の対象となる。

 

Q4.今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)について、なぜ標準報酬

月額が10.4 万円以下の者のみが対象となるのか。

A4.標準報酬月額11.0 万円()以上の方については、年収が 128 万円以上となり、

社会保険の保険料負担を考慮しても尚、手取り収入が 106 万円を超えることから、

既に「106 万円の壁」を越えており、壁を越える後押しをすることを目的とした今般の措置の対象としていない。

※被保険者の報酬月額が 10.7 万円以上 11.4 万円未満の場合に、標準報酬月額が 11.0 万円となります(報酬月額 10.7 万円を年収換算すると 128.4 万円)。

 

Q5.従業員100 人以下の事業所ですが、今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬

算定除外)の対象となるか。

A5. 事業所が特定適用事業所かどうかにかかわらず、社会保険(被用者保険)に新た

に適用される労働者について、今回の措置の対象となる可能性がある。

また、事業所内で既に社会保険が適用されている労働者がいる場合には、当該労働者の標準報酬月額が 10.4 万円以下であれば、保険料負担を軽減するために支給した手当について、本人負担分の保険料相当額を上限として標準報酬月額・標準賞与額の算定に考慮しないこととすることが可能である。

なお、従業員100 人以下の事業所であっても、被保険者の同意に基づき、短時間労

働者の適用拡大の対象事業所(任意特定適用事業所)となる場合には、被保険者数101 人以上の特定適用事業所と同様の条件でキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の利用が可能である。

 

Q6.以前からの勤め先ですでに社会保険に加入しているが、別の事業所でも加入要件

を満たしたため社会保険に加入する。新たに社会保険に加入する事業所で社会保

険促進手当の支払いを受けるが、今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬

算定除外)の対象となるか。

A6.複数の事業所に勤務し、各事業所において社会保険の加入要件を満たしている被

保険者については、事業所ごとで今回の措置の対象となるのか確認する。

そのため、新たに社会保険に加入する事業所で、当該事業所の報酬のみで標準報酬月額を算出したならば、その額が10.4万円以下である場合には、今回の措置の対象となる。

 

■手当の支給について

Q1.今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)について、標準報酬等の

算定から除外できる上限額はあるか。

A1.社会保険の適用に伴い発生する本人負担分の社会保険料負担、すなわち健康保険・厚生年金保険・介護保険に係る本人負担分の保険料相当額が、標準報酬等の算定から除外できる上限額となる。

 

Q2.今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)について、標準報酬等の

算定から除外できる期間の上限はあるか。

A2,それぞれの労働者について、最大2年間、標準報酬月額・標準賞与額の算定において考慮しないこととする。

各労働者について、2年が経過した後は、通常の手当と同様に標準報酬月額・標準賞与額の算定に含めて保険料が計算される。

 

Q3.今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)について、具体的には、いつ発生した保険料相当額について、いつの標準報酬月額等の算定から除外することができるのか。

A3.令和5年 10 月以降の社会保険適用促進手当を実際に支給する月の標準報酬月額等の算定から除外することができる。

 

Q4.本人負担分の保険料相当額を超えて手当を支払った場合でも、全額を「社会保険適

用促進手当」として支払ってよいか。

A4.基本的には、標準報酬等の算定から除外する部分については「社会保険適用促進手当」という名称として、これを超える部分については別の名称の手当として支給する取扱いを想定している。

なお、本人負担分の保険料相当額を超える分については、今回の措置(社会保険

適用促進手当の標準報酬算定除外)の対象外となるため、標準報酬月額等の算定に含まれることとなり、随時改定の契機にもなり得る。

 

Q5.社会保険適用促進手当について、労働者が標準報酬月額・標準賞与額の算定から除

くことを希望しない場合は、手当を含めて標準報酬月額・標準賞与額を算定してよいか。

A5.今回の社会保険適用促進手当の特例(社会保険料の算定に当たって標準報酬月額

等に含めない取扱い)は、労使双方の合意を前提の活用となるが、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給する手当であっても、労働者の希望を確認した上で標準報酬月額等の算定の対象から除かない場合は、「社会保険適用促進手当」以外の名称を使用し、支給すること。

 

Q6.社会保険適用促進手当を支給する場合、この手当について、就業規則(又は賃金規

程)を変更した上で、労働基準監督署への届出が必要になるか。

A6.必要となる。

 

Q7.今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)は、各労働者について2

年限りの措置とのことですが、期間の終了に伴い手当の支給自体を取りやめる場合、終了時に不利益変更の問題は生じないか。

A7.就業規則(又は賃金規程)において、予め、一定期間に限り支給する旨を規定することで、その旨含めて労働契約の内容としておくことが対応として考えられる。

 

Q8.社会保険適用促進手当は労働者に毎月支払う必要があるのか。複数月分の本人負担

分保険料相当額について、まとめて社会保険適用促進手当を支払うことは可能か。

A8.社会保険適用促進手当について、あくまでも事業主が労働者に対し、労働者の社

会保険料負担を軽減するために自らのご判断で支給いただくものであり、支給の対象やタイミング、方法についてもそれぞれの事業主ごとに決定することになる。

ただし、標準報酬月額等の算定から除外できる上限額は、労働者の標準報酬月額

10.4 万円以下であった月に発生した本人負担分の保険料相当額となる。

 

Q9.今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)を受けていたが、月額変更により標準報酬月額が 10.4 万円超となった。社会保険適用促進手当はいつから標準報酬月額に算入する必要があるのか。

A9.標準報酬月額が 10.4 万円超である場合、社会保険適用促進手当は標準報酬月額

に算入する必要があるため、標準報酬月額 10.4 万円超となった月から社会保険適

用促進手当を標準報酬月額の算定に含めることとなる。社会保険適用促進手当を標準報酬月額の算定に含めることは固定的賃金の変動にあたるため、月額変更の要件を満たす場合には、社会保険適用促進手当を標準報酬月額の算定に含めた月から4か月目に標準報酬月額を改定する。

 

Q10.社会保険適用促進手当は、傷病手当金や出産手当金との調整の対象となる報酬に含

まれるか。

A10.社会保険適用促進手当については、傷病手当金等の支給額算出の基礎となる標準

報酬月額の算定に考慮しないことから、傷病手当金等との調整対象となる報酬には含まれない。

 

■その他について

Q1.適用事業所における短時間労働者の社会保険の適用要件である「所定内賃金が月額

8.8万円」の判定において、社会保険適用促進手当は含まれるのか。

A1.適用事業所における短時間労働者の社会保険の適用要件である月額賃金 8.8

円の判定に当たっては、今回の措置(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)

の目的があくまでも、労働者の社会保険料負担を軽減することで社会保険の適用を

促進することであることに鑑み、社会保険適用促進手当を含めて判断することとなる。

 

Q2.社会保険適用促進手当は、標準報酬月額・標準賞与額の算定において考慮しないと

いうだが、将来の厚生年金保険の給付額に影響はないのか。

A2.社会保険適用促進手当が保険料の賦課対象となる標準報酬月額等に含まれない以上、厚生年金保険の給付額の算出基礎にも含まれないこととなる。

 

Q3.今回の特例(社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外)は、所得税や住民税、労

働保険料についても対象となるか。

A3.厚生年金保険、健康保険の標準報酬月額等の算定のみに係る取扱いとなり、税等の他制度に関しては通常の取扱いとなる。

 

Q4.社会保険適用促進手当は、割増賃金や平均賃金、最低賃金の算定基礎に算入されるか。

A4.

(1)社会保険適用促進手当が毎月支払われる場合には、割増賃金の算定基礎に算入される。

他方、臨時、1か月を超える期間ごとに支給される場合には、割増賃金の算定基礎に算入されない。

(2)社会険適用促進手当が毎月支払われる場合や3か月以内ごとに支払われる場合には、平均賃金の算定基礎に算入される。

   他方、3か月を超える期間ごとに支払われる場合には、平均賃金の算定基礎に算入されない。

(3)社会保険適用促進手当が毎月支払われる場合には、最低賃金の算定基礎に算入される。

 

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