労働条件明示のルール改正Q&A

労働条件明示のルール変更に関するQ&A

■新たな明示ルールの適用時期・対象者について

Q1.今回の改正を受けて、既に雇用されている労働者に対して、改めて新たな明示ルール

に対応した労働条件明示が必要か。

A1.既に雇用されている労働者に対して、改めて労働条件を明示する必要はない。

新たな明示ルールは、今般の省令・告示改正の施行日である令和6年4月1日以降に締結される労働契約について適用される。

もっとも、労働条件に関する労働者の理解を深めるため、再度の明示を行うことは望 ましい取組と考えられる。

また、有期契約労働者については、契約の更新は新たな労働契約の締結であるため、

令和6年4月1日以降の契約更新の際には、新たなルールに則った明示が必要となる。

 

Q2.令和6年4月1日を契約の開始日とする契約の締結を3月以前に行う場合、

新たな明示ルールに基づく労働条件明示が必要か。

A2.労基法 15 条の労働条件明示は、労働契約の締結に際し行うものであることから、契約の始期が令和6年4月1日以降であっても、令和6年3月以前に契約の締結を行う場合には、改正前のルールが適用され、新たな明示ルールに基づく明示は不要である。

もっとも、労働条件に関する労働者の理解を深めるため、令和6年3月以前から

新たな明示ルールにより対応することは、望ましい取組と考えられる。

 

■変更の範囲の明示について

Q3.就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲の明示について、「変更の範囲」とは、当該労働契約の期間中における変更の範囲を指すと解してよいか。

A3.就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲とは、当該労働契約の期間中における変更の範囲を意味する。

   このため、契約が更新された場合にその更新後の契約期間中に命じる可能性がある就業の場所及び業務については、改正労基則において明示が求められるものではない。 

   もっとも、労働者のキャリアパスを明らかにする等の観点から、更新後の契約期間中における変更の範囲について積極的に明示することは考えられる。

 

Q4.日雇い労働者に対して、就業の場所及び従事すべき業務の「変更の範囲」を明示する必要はあるか。

Q4.雇入れ日における就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足り、「変更の範囲」を明示する必要はない。

 

 

■更新上限の明示について

Q5.有期労働契約の更新回数の上限とは、契約の当初から数えた回数を書くのか、残りの契約更新回数を書くのか。また、通算契約期間の上限についてはどうか。

A5.労働者と使用者の認識が一致するような明示となっていれば差し支えない。

なお、労働者・使用者間での混乱を避ける観 点からは、契約の当初から数えた更新回数又は通算契約期間の上限を明示し、その上で、現在が何回目の契約更新であるか等を併せて示すことが考えられる。

 

Q6.改正労基則の規定では、有期労働契約の更新上限については、「上限の定めがある場合には当該上限を含む」と規定されている(改正労基則5条1項1号の2括弧書き)。

厚生労働省が公開しているモデル労働条件通知書には、「更新上限の有無(無・有(略))」という欄があるが、更新上限がない場合にも上限がない旨の明示を必ずしなければならないか。  

A6.改正労基則では、有期労働契約の更新上限を定めている場合にその内容を明示することが求められており、更新上限がない場合にその旨を明示することは要しない。

他方で、有期労働契約の更新上限の有無を書面等で明示することは労働契約関係の明確化に資するため、モデル労働条件通知書では更新上限がない場合にその旨を明示する様式としている。

 

Q7.有期労働契約の更新上限の明示について、雇用期間の終期を定めている場合(例:「契約更新した場合でも最長令和 10 年3月 31 日までとする」)に、当該終期の明示をもって通算契約期間の明示とすることは可能か。

A7.雇用期間の終期は通算契約期間の終期と同義であり、雇用期間の終期を明示することで労働者が有期労働契約の更新上限を理解することができるため、通算契約期間の明示に当たり、雇用期間の終期を明示することは可能である。

 

Q8.改正雇止めに関する基準1条において、使用者は、有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更又は更 新に際して、通算契約期間又は有期 労働契約の更新回数について、上限を定め又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由について労働者に説明しなければならないとされているが、労働者が納得することまで求められていないということで良いか。

A8.改正雇止めに関する基準1条に基づき、使用者は、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとする理由を労働者に説明することが義務付けられているが、当該理由の説明により、有期契約労働者が納得することまで求められているものではない。

 

Q9.通算契約期間又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある労働契約にもかかわらず、労働条件通知書に通算契約期間又は有期労働契約の更新回数の記載がない場合、当該労働契約は、自動的に通算契約期間又は更新回数の上限がない労働契約と

なるか。

A9.更新上限の定めがあるにもかかわらず、書面による明示が行われていない場合は、労基法15条違反となるが、明示されなかったことをもって、直ちに通算契約期間又は更新回数の上限がない労働契約が成立するものではない。更新上限の内容についての合意の有無等から最終的には司法において判断されるものである。

 

■無期転換申込み機会の明示について

Q10.労契法 18 条に規定する無期転換ルールに基づき無期労働契約への転換を申し込むことができる権利(無期転換申込権)を行使しない旨を表明している有期契約労働者に対しても、無期転換申込み機会の明示を行う必要があるか。

A10.明示を行う必要がある。

 

■就業規則の周知について

Q11.厚生労働省が公開しているモデル労働条件通知書に、「就業規則を確認

できる場所や方法」の欄が追加されたが、これは労基則の改正に基づくものか。

A11.労基則の改正に基づくものではない。 就業規則について、法令上は、労基法106

 条に基づき、労基則52条の2に定める方法()によって労働者に周知させなければならないとされている。

この就業規則の周知について、令和4年1227日付け労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を踏まえ、今般、施行通達において、就業規則を備え付けている場所等を労働者に示すこと等により就業規則を労働者が必要なときに容易に確認できる状態にする必要があることを明らかにしたところ。モデル労働条件通知書への欄の追加は、当該通達改正に対応するものである。

(※)労基則 52 条の2(抜粋)

第五十二条の二 法第百六条第一項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げる方

法とする。

一 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。

二 書面を労働者に交付すること。

三 使用者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は第二十四条の二

の四第三項第三号に規定する電磁的記録媒体をもつて調製するファイルに記

録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置

     すること。

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