▽天災地変に伴う休業手当について
(天災に伴う休業手当支払義務の有無)
■法令および行政解釈
1.法令(労働基準法第26条 休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中に
休業手当(平均賃金の60/100)を支払わなければならない。
2.行政解釈
天災事変等の不可抗力(※)の場合には使用者の責に帰すべき事由に当たらず、
使用者に休業手当の支払義務はない。
▼(※)不可抗力とは、次の2つの要件を備えたものでなければならない。
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者として最大限の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故
であること
■次の事由により労働者を休業させる場合は、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に
当たるか。
1.今回の地震により、当該事業場の施設・設備が直接的な被害を受けた場合
⇒その原因が事業主の関与範囲外のものであり、原則として使用者の責に帰すべき
事由に該当しない。
(=休業手当の支払義務はない。)
2.今回の地震により、当該事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないが、
取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不能となった場合
⇒事業ごとに、当該取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、
災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を
総合的に勘案して判断。
(=個別判断)
3.被災地に所在する派遣先事業場が閉鎖となったため、派遣元事業主が派遣労働者を
休業させる場合
⇒他の派遣先への派遣の可能性を考慮して判断。
(=個別判断)
■参考通達
1.下請工場の資材、資金難(昭和23.6.11 基収1998号)
親会社からのみ資材資金の供給を受けて事業を営む下請工場が、
現下の経済情勢から親会社自体が経営難のため資材資金獲得に支障をきたし、
休業した場合は、使用者の責めに帰すべき休業に該当する。
2.派遣労働者の休業手当支払いの要否(昭和61.6.6 基発第333号)
派遣中の労働者の休業手当について、労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由
があるかどうかの判断は、派遣元の使用者についてなされる。
したがって、派遣先の事業場が、天災地変等の不可抗力によって操業できないために、
派遣されている労働者を当該派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、
それが使用者の責に帰すべき事由に該当しないこととは必ずしもいえず、
派遣元の使用者について、当該労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて判断し、
その責に帰すべき事由に該当しないかどうかを判断することになる。