▽なにかとトラブりやすい、「解雇のルール」を確認!
1.解雇事由(どんなときに解雇されるのか)の明示義務
就業規則と労働契約書(労働条件通知書)に、
解雇事由をあらかじめ示してあること、
又、解雇するときには、その要件に合致することが必要である。
▲労働契約書(労働条件通知書)には、解雇事由の項目は必須であるが、
内容については、就業規則の条文を示すだけでもよい。
(例)解雇事由 就業規則第〇〇条による。
●この要件は、法改正により平成16年1月から設けられた。
それ以前に定められた就業規則には、具体的な解雇事由が定められていない
ケースが多いので見直しておくことが必要である。
2.解雇権の濫用による解雇は無効
■就業規則や労働契約書に解雇事由が明示されていたとしても、
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして無効とする」と法律で定められている。
(労働契約法第16条)
▲「体調が悪く連絡できないまま無断欠勤をした」といったやむを得ない理由が
ある場合や単に「商品を壊した」、「服装がだらしない」といった理由だけでは、
解雇できない。
3.解雇の種類(3つ)
(1)普通解雇・・・整理解雇、懲戒解雇以外の解雇
●労働契約の継続が困難な事情があるときに限られる。
例)・勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがない
・健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めない
・著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがない
(勤務態度)
(2)整理解雇・・・会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇
次の4点をいずれも満たすことが必要。(整理解雇4要件)
●客観的な必要性
●解雇回避の最大限の努力
●解雇対象者の人選基準、運用の合理性
●労使間での十分な協議
(3)懲戒解雇・・・従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに
懲戒処分として行う解雇
★就業規則や労働契約にその要件を具体的に明示しておくことが、必要である。
4.解雇予告
従業員を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前に予告するか、
30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(解雇予告手当)。
▲平均賃金を何日分か支払った場合はその日数分の予告期間が短縮される。
例)・即日解雇→解雇予告手当は30日分以上
・20日前に解雇予告→ 解雇予告手当は10日分以上
・30日前に解雇予告→ 解雇予告手当は不要
■解雇予告は口頭でも有効だが、口約束では後々トラブルの原因となるので
解雇する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成することが望ましい。
■従業員から作成を求められた場合は、
解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければならない。
5.解雇予告が除外される場合
次の場合には、解雇予告及び解雇予告手当の支払をせずに即時に労働者を解雇できる。
▲ただし、解雇を行う前に、労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を
受けなければならない。
△これは、就業規則の懲戒解雇事由と必ずしも一致するものではないとされている。
●天災事変その他やむを得ない事由で事業の継続が不可能となった場合
(例)火災による焼失・地震による倒壊など
●従業員の責に帰すべき事由による解雇の場合
(例)横領・傷害・2週間以上の無断欠勤など
6.解雇予告除外認定基準
労働基準監督署では、「従業員の責に帰すべき事由」として除外認定があったとき
は、従業員の勤務年数、勤務状況、従業員の地位や職責を考慮し、次のような基準に
照らし使用者、従業員の双方から直接事情等を聞いて認定するかどうか判断する。
△これは、就業規則等の懲戒解雇事由に囚われるものではないとされている。
(1)会社内における窃取、横領、障害等刑法犯に該当する行為があった場合。
(2)賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の労働者に悪影響を
与えた場合。
(3)雇い入れの際、採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合。
(4)他の事業へ転職した場合。
(5)2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
(6)遅刻、欠勤が多く、数回に渡って注意を受けても改めない場合。
7.解雇予告が不要な場合
次の者には解雇予告そのものが適用されない。
▲ただし、( )内の日数を超えて引き続き使用されている場合には解雇予告制度
の対象となる。
(1)試用期間中の者(14日)
(2)契約期間が2ヶ月以内の者(その契約期間)
(3)4ヶ月以内の季節労働者(その契約期間)
(4)日雇労働者(1ヶ月)
8.解雇予告手当の計算方法
■解雇予告をしないで即時解雇をしようとする場合は、解雇と同時に平均賃金(※)
の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない。
■解雇しようとする日までに30日分以上の余裕がないときは、解雇の予告をした上
で、30日分に不足する日数分の解雇予告手当を支払わなければならない。
(例)6月10日に「6月30日付けで解雇をする」と予告をした場合
△10日分の解雇予告手当てが必要である。
(※)平均賃金(過去3ヶ月間における1日あたり賃金)は、
次の2つを比較して、高い方とする。
(1)過去3ヶ月間の賃金の合計/過去3ヶ月間の歴日数
(2)過去3ヶ月間の賃金の合計/過去3ヶ月間の労働日数×0.6
9.解雇予告手当の支払い時期
●即時解雇しようとする場合は、解雇と同時に支払うことが必要である。
●解雇予告と解雇予告手当を併用する場合は、遅くとも解雇の日までに支払うこと
が必要である。
10.解雇制限期間
次の期間は、解雇を行うことができない。(労働基準法第19条)
(1)労災休業期間とその後30日間
(2)産前産後休業期間とその後30日間
11.解雇の禁止について
次に該当する場合の解雇は、法律上禁止されている。
(1)国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇。(労働基準法第3条)
(2)労働者が労働基準監督署へ申告したことを理由とする解雇。
(労働基準法第104条)
(3)労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由
とする解雇。(労働組合法第7条)
(4)女性であること、女性が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後の休業をした
ことを理由とする解雇。(男女雇用機会均等法第8条)
(5)育児休業の申出をしたこと、又は育児休業をしたことを理由とする解雇。
(育児・介護休業法第10条)
(6)介護休業の申出をしたこと、又は介護休業をしたことを理由とする解雇。
(育児・介護休業法第16条)
12.諭旨(ゆし)解雇
諭旨解雇とは、本来は懲戒解雇なのであるが、会社の温情により自己都合退職を
促すものである。
雇用保険の離職票も原則として自己都合となる。
■「諭旨解雇」は法律用語ではないので、会社により様々に取り扱われているが、
一般的には次のようなケースが多い。
(1)懲戒解雇の一種
就業規則及び労働契約書において懲戒解雇の一つ(通常、懲戒解雇に次ぐ重い処分)
としてあらかじめ規定されており、解雇予告手当や退職金を全額又は一部支払った
上で解雇する。
(2)手続き上は退職勧奨による退職
退職を勧められたことにより、自分の意思で退職することであり、解雇ではない。
▲しかし、脅迫や精神的に追い込むなど、社員の真意に反して辞表を提出させた
場合は、辞表そのものが無効となることがある。
13.懲戒解雇と退職金
懲戒解雇をしたときに退職金を減額又は支給しないことができるか否かは、
個別に判断する必要があるが、少なくとも就業規則等に
「懲戒解雇の場合には退職金を減額し、又は支給しない」といった規定が
あらかじめ設けられていることが必要である。