H22/10~
▽有期契約労働者の雇用管理改善に関するガイドライン
◆趣旨
フルタイム有期契約労働者
(一週間の所定労働時間が通常の労働者と同一な有期契約労働者)
について雇用管理の改善が図られるよう、労働関係法令等を踏まえてのガイドライン
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◆対象者
契約を数回更新しているようなフルタイム有期契約労働者を主たる対象とするが、
それ以外の有期契約労働者(有期契約の短時間労働者等)を排除するものではない。
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◆有期契約労働者の雇用に関し留意しなければならない項目
1.安定的な雇用関係に配慮した雇用環境の整備
事業主は、有期契約労働者について、募集及び採用を適切に行うとともに、
安定的な雇用関係の確保を図るため、次のような点に配慮し雇用環境の整備
に努めなければならない。
①契約期間、更新の有無の明示等
ア.契約期間の明示
(ア)労働者の募集を行う者は、その募集に当たって、労働契約の期間
に関する事項を明示しなければならない。(職安法第5条の3)
△書面の交付又は電子メールによって明示しなければならない。
(イ)使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して、労働契約の期間
に関する事項を明示しなければならない。(基準法第15条第1項)
△書面の交付によって明示しなければならない。
イ.更新の有無及び判断基準の明示
使用者は、有期労働契約の締結に際し、労働者に対して、更新の有無を明示
しなければならず、更新する場合がある旨明示したときは、更新の判断基準を
明示しなければならない。(雇止め告示第1条)
△明示すべき「更新の有無」の具体的内容については
(1)自動的に更新する。(2)更新する場合があり得る。(3)契約の更新はしない。
△「判断の基準」の具体的内容については、
(1)契約期間満了時の業務量、(2)労働者の勤務成績・態度、
(3)労働者の業務遂行能力、(4)会社の経営状況、
(5)従事している業務の進捗状況などが考えられる。
ウ.労働者の理解の促進
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、
労働者の理解を深めるようにすること。(契約法第4条第1項)
△例えば、
(1)労働契約締結時又は労働契約締結後において就業環境や労働条件が大きく
変わる場面において、使用者がそれを説明し又は労働者の求めに応じて
誠実に回答すること
(2)労働条件等の変更が行われずとも、労働者が就業規則に記載されている
労働条件について 説明を求めた場合に使用者がその内容を説明することなど。
エ.書面確認
労働者及び使用者は、労働契約の内容(有期労働契約に関する事項を含む。)
について、できる限り書面により確認すること。(契約法第4条第2項)
△例えば、
労使で話し合った上で、労働条件を記載した書面を労働者に交付することなど。
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②契約期間についての配慮
ア.目的に照らした配慮
使用者は、有期労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に
照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新
することのないよう配慮すること。(契約法第17条第2項)
△例えば、
ある労働者について、使用者が一定の期間にわたり使用しようとする場合には、
その一定の期間において、より短期の有期労働契約を反復更新するのではなく、
その一定の期間を契約期間とする有期労働契約を締結するよう配慮しなければならない。
イ.契約更新時の配慮
(1回以上更新し、かつ雇入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している者に限る)
使用者は、有期労働契約を更新しようとする場合には、契約の実態及び労働者の
希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
(雇止め告示第4条)
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③雇用契約の遵守
ア.契約期間中の解雇
使用者は、有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、
その契約期間 が満了するまで、労働者を解雇することができない。
(契約法第17条第1項)
△例えば、
契約期間中であっても一定の事由により解雇することができる旨を労働者及び
使用者が合意していた場合であっても、当該事由に該当することをもって
「やむを得ない事由」があると認められるものではなく、実際に行われた解雇に
ついて「やむを得ない事由」があるか否かが個別具体的な事案に応じて判断される。
イ.退職に関する事項の明示
使用者は、労働契約の締結に際し、退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
を明示しなければならない(基準法第15条第1項)。
△書面の交付によって明示しなければならない。
ウ.解雇の予告
使用者は、労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告
をしなければならない(基準法第20条第1項)。
△30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
エ.退職時等の証明
労働者が、退職の場合において、
(1)使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由
(退職事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合や、
(2)労働者が、解雇予告日から退職日までに、解雇の理由について証明書を 請求した場合、
使用者は、遅滞なく交付しなければならない(基準法第22条第1項及び第2項)。
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④雇止めの予告及び雇止めの理由の明示
ア.雇止めの予告
使用者は、次のいずれかの有期労働契約を更新しないこととしようとする場合
には、少なくとも30日前までにその予告をしなければならない。
(雇止め告示第2条)
(1)3回以上更新されている場合
(2)1年を超えて継続して雇用されている場合
(3)1年を超える期間の労働契約を結んでいる場合
▲ただし、いずれの場合も、あらかじめ更新しない旨、明示されているものを除く。
イ.雇止めの理由の明示
上記ア.に該当する場合において、雇止め予告後、又は雇止後に、
労働者から雇止めの理由について証明書を請求された場合、使用者は、
遅滞なくこれを交付 しなければならない(雇止め告示第3条)。
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⑤妊娠・出産等を理由とした不利益な取扱いの禁止
事業主は、女性労働者が妊娠したことや出産したこと等を理由として雇止め等の不利益
な取扱いをしてはならない(均等法第9条第3項)。
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2.労働条件等の改善のための事項
事業主は、有期契約労働者について、その労働条件や処遇等の改善を図るため、
次のような点に配慮し、雇用環境の整備に努めなければならない。
①労働条件の明示等
ア.労働条件の明示
(ア)労働者の募集を行う者は、その募集に当たって、労働者が従事すべき業務
の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
▼この場合において、
(1)労働契約の期間に関する事項
(2)就業の場所、従事すべき業務の内容に関する事項
(3)始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、
休日に関する事項
(4)賃金の額に関する事項
(5)健康保険等の適用に関する事項
については、書面の交付又は電子メールにより行わなければならない。
(職安法第5条の3)
(イ)使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して、賃金、労働時間
その他の労働条件を明示しなければならない。
▼この場合において、
(1)労働契約の期間に関する事項
(2)就業の場所、従事すべき業務に関する事項
(3)始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、
休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
に関する事項
(4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金、賞与その他これらに準ずる
賃金を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期
に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
については、書面の交付により行わなければならない。
(基準法第15条第1項)
(ウ)事業主は、有期契約労働者を雇い入れたときは、速やかに、(イ)の事項の他
昇給の有無、退職手当の有無及び賞与の有無を文書の交付等により明示すべき
である。また、これら以外の事項についても、文書の交付等により明示するよう
に努めるべきである。(パート法第6条参照)
イ.待遇の決定に当たって考慮した事項の説明
事業主は、有期契約労働者から求めがあった場合には、その待遇を決定するに
当たって考慮した事項を説明するべきである。(パート法第13 条参照)
ウ.労働者の理解の促進
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、
労働者の理解を深めるようにすること。(契約法第4条第1項)
△例えば、労働契約締結時又は労働契約締結後において就業環境や労働条件が大きく
変わる場面において、使用者がそれを説明し又は労働者の求めに応じて誠実に回答
すること、労働条件等の変更が行われずとも、労働者が就業規則に記載されている
労働条件について説明を求めた場合に使用者がその内容を説明することなど。
エ.書面確認
労働者及び使用者は、労働契約の内容(有期労働契約に関する事項を含む。)
について、できる限り書面により確認すること。(契約法第4条第2項)
△例えば、労使で話し合った上で、労働条件を記載した書面を労働者に交付することなど。
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②就業規則の整備
ア.作成及び届出
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、
労働基準監督署に届け出なければならない。(基準法第89条)
△ここでいう「労働者」には、有期契約労働者も含まれる。
イ.作成の手続
使用者は、就業規則の作成又は変更について、その事業場の過半数労働組合又は
過半数代表者の意見を聴かなければならず、就業規則の届出の際に
添付しなければならない。(基準法第90条)
事業主は、有期契約労働者に係る事項について就業規則を作成又は変更しようと
するときは、その事業所の有期契約労働者の過半数代表者の意見を聴くように
努めるべきである。(パート法第7条参照)
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③均衡考慮の原則及び仕事と生活の調和への配慮の原則
ア.均衡考慮の原則
労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、
均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきである。(契約法第3条第2項)
イ.仕事と生活の調和への配慮の原則
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、
又は変更すべきである(契約法第3条第3項)。
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④通常の労働者との均衡の取れた待遇
ア.賃金等
事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しながら、職務の内容、職務の成果、
意欲、能力又は経験等を勘案し、賃金(基本給、賞与、職務に関連する手当)を
決定するよう努めるべきである。(パート法第9条第1項参照)
また、退職手当、通勤手当等職務に密接に関連して支払われるもの以外の手当
についても、就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように
努めるべきである。(パート指針第3の1(2)参照)
イ.福利厚生
事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設のうち、
給食施設、休憩室、更衣室については、有期契約労働者にも利用の機会を与えるよう
配慮するべきである(パート法第11条参照)。
そのほか、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等を目的とした
福利厚生施設の利用及び事業主が行うその他の福利厚生の措置についても、
有期契約労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いを
するよう努めるべきである。(パート指針第3の1(3)参照)
ウ.苦情処理体制の整備
事業主は、有期契約労働者から賃金、教育訓練、福利厚生等に関して、
苦情の申し出を受けたときは、自主的な解決を図るように努めるべきである。
(パート法第19条参照)
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⑤年次有給休暇
使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、
全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、有休を比例付与しなければならない。
(基準法第39条第1項~第3項)
△「継続勤務」の要件に該当するかどうかについては、
勤務の実態に即して判断すべきものであり、有期労働契約が反復している場合、
各々の労働契約期間の終期と始期との間に短期間の間隔を置いたとしても、
それだけで当然に継続勤務が中断することにはならない。
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⑥育児休業・介護休業等
ア.育児休業制度
(子が1歳に達するまで(一定の場合、子が1歳6か月に達するまで))
事業主は、次のいずれの要件にも該当する有期契約労働者から
育児休業の申出があった場合、育児休業の申出を拒むことはできない。
(育介法第5条、同第6条)
(1)同一の事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者
(2)その養育する子が一歳に達する日(以下「一歳到達日」という。)を超えて
引き続き雇用されることが見込まれる者
▲ただし、当該子の一歳到達日から一年を経過する日までの間に、
その労働契約の期間が満了し、かつ、
当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。
イ.介護休業制度(対象家族1人につき、通算して93日まで)
事業主は、次のいずれの要件にも該当する有期契約労働者から
介護休業の申出があった場合、介護休業の申出を拒むことはできない。
(育介法第11条、同第12条)
(1)同一の事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者
(2)介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超えて
引き続き雇用されることが見込まれる者
ウ.子の看護休暇制度
(対象となる子が1人の場合は年5日、2人の場合は年10日まで)
事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する有期契約労働者から
子の看護休暇の申出があった場合、その申出を拒むことはできない。
(育介法第16条の2、同第16条の3)
※その他、育介法に規定する時間外労働の制限(育介法第17条)、
深夜業の免除(育介法第19条)、勤務時間短縮等の措置(育介法第23条)等
についても有期契約労働者に適用される。
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3.キャリアパスへの配慮等(正社員登用)
事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する有期契約労働者
について、次のいずれかの措置を講ずるべきである。
(パート法第12 条第1項参照)
①通常の労働者の募集を行う場合に、その業務内容、賃金、労働時間等の募集条件を
事業所に掲示するなど、有期契約労働者にも周知すること。
② 通常の労働者の配置を新たに行う場合に、当該配置の希望を申し出る機会を、
有期契約労働者にも与えること。
③有期契約労働者から通常の労働者への転換のための試験制度を設けるなどの措置
を講ずること。
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4.教育訓練・能力開発の機会の付与
事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練で、職務の遂行に必要なもの
については、職務の内容が同じ有期契約労働者に対しても実施するべきである。
また、そのほかにも、通常の労働者との均衡を考慮して、職務の内容、職務の成果、
意欲、能力及び経験等に応じ、有期契約労働者に対して教育訓練を実施するよう
に努めるべきである(パート法第10条第1項及び第2項参照)。
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5.法令の遵守
①有期契約労働者の雇用管理の改善等を図るに当たり、次に掲げる労働者保護法令は、
有期契約労働者にいても適用があることを認識し遵守しなければならない。
(1)労働基準法
(2)最低賃金法
(3)労働安全衛生法
(4)労働者災害補償保険法
(5)職業安定法
(6)雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
(7)育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(8)雇用保険法など
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②事業主は、雇入れ時又は作業内容を変更したとき、労働者に対して、その従事する業務
に関する安全衛生教育を行わなければならない。また、危険有害業務就業時の
安全衛生教育を行わなければならない(安衛法第59条第1項~第3項)。
③事業主は、有期契約労働者の就業の状況等を踏まえ、加入の必要がある場合、
雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険に加入させてから就業させなければならない。
△例えば
(1)雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、
31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合、被保険者になる。
(2)社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、適用事業所の従業員であれば、
一定の要件(1日又は1週間の所定労働時間かつ1月の所定労働日数が
通常の就労者の概ね4分の3以上)を満たせば被保険者になる。
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6.法令等の周知
使用者は、労働基準法及びこれに基づく命令の要旨、就業規則等を常時各作業場の
見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付すること
その他厚生労働省令で定める方法によって、有期契約労働者を含む労働者に周知
させなければならない(基準法第106条第1項)。
△基準法では法令等の周知義務が規定されているが、「(5)法令の遵守」に記載されている
法令等についても周知することが望ましいものと考えられる。