H23/3/18版(厚生労働省)
▽要約
■はじめに
東北地方太平洋沖地震の発生により、被害を受けられた事業場においては、事業の継続
が困難になり、又は著しく制限される状況にある。
また、被災地以外に所在する事業場においても、鉄道や道路等の途絶から原材料、製品等
の流通に支障が生じるなどしている。
このため、労働基準法の一般的な考え方などについてQ&Aを取りまとめることとした。
今回の第1版では、地震に伴う休業に関する取扱いについて記載している。
△なお、労働基準法上の義務については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案
すべきものである。
■ 地震に伴う休業に関する取扱いについて
Q1:今回の被災により、事業の休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業とする場合の
心がけについて。
A1:労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力することが大切であり、
休業を余儀なくされた場合の支援策も活用し、労働者の保護を図るようお願いしたい。
Q2:従来、天災地変等の不可抗力による休業についても賃金、手当等を支払うことと
している企業が、今般の計画停電に伴う休業について、賃金、手当等を支払わない
とすることは、適法か。
A2:労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づき従来支払われてきた賃金、手当
等を、今般の計画停電に伴う休業については支払わないとすることは、
労働条件の不利益変更に該当する。このため、労働者との合意など、適法な変更手続を
とらずに、賃金、手当等の取扱いを変更する(支払わないこととする)ことはできない。
なお、企業側の都合で休業させた場合には、最低労働条件として労働基準法第26条に
基づく休業手当を支払う必要がある。
Q3:雇用調整助成金や中小企業緊急雇用安定助成金について、実施した休業が
労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するか否か
でその扱いは異なるのか。また、計画停電の実施に伴う休業の場合は、どうか。
A3:本助成金は、使用者の責に帰すべき事由による休業に該当するか否かにかかわらず
事業主が休業についての手当を支払う場合には助成対象となり得る。
このことは、計画停電に伴う休業であっても同様である。
Q4:今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、
使用者の責に帰すべき事由による休業に当たるか。
A4:この場合、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者
として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えらるので、
原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられる。
Q5:事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないが、取引先や鉄道・道路が被害を
受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、
使用者の責に帰すべき事由による休業に当たるか。
A5:取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生から
の期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する
必要がある。
Q6:今回の地震に伴って計画停電が実施され、停電の時間中を休業とする場合、
労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるか。
A6:事業場に電力が供給されないことを理由として、計画停電の時間帯、
すなわち電力が供給されない時間帯を休業とする場合は、
原則として、使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、
休業手当を支払わなくても労働基準法違反にならないと考えられる。
Q7:計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて1日全部を休業とする場合、
労働基準法第26条の休業手当を支払う必要はあるか。
A7:計画停電の時間帯以外の時間帯については、
原則として使用者の責に帰すべき事由による休業に該当すると考えられる。
▲ただし、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を
総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と
認められる場合には、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて、
原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当せず、
休業手当を支払わなくても労働基準法違反とはならないと考えられる。