無期転換ルール本格化!
Q.平成30年4月から無期転換ルールが本格的にはじまるということですが、他社状況
や間違いやすいチェックポイントを教えて下さい。
A.無期転換ルールとは、平成25年4月以後の有期労働契約が繰り返し更新されて通算5
年を超えたときに、労働者の申込みにより、 無期労働契約に転換できるルールです。
厚生労働省が公表している調査結果によると、4割超の会社は、労働契約法が改正さ
れた内容までは知らないと回答しています。
(平成27年12月18日、(独)労働政策研究・研修機構実施)
有用判例については平成30年4月以後の司法判断を仰ぐことになりますが、以下6
つのポイントを確認しておきましょう。
■1.会社は断ることができない。
有期契約労働者が会社に対して無期転換の申込みをした場合、無期労働契約が成立
します。会社は断ることができません。
■2.無期転換のタイミング
無期転換の申込みがあった場合、申込時の有期労働契約が終了する日の翌日から、
無期労働契約となります。契約期間により、次表のとおり、無期転換申込権が発生す
る時点は異なります。
契約期間 |
無期転換申込権発生 |
無期労働契約成立 |
|
更新回数 |
契約締結 |
||
1年 |
5回目 |
6年目 |
6年間の契約終了の翌日 |
2年 |
2回目 |
5年目 |
|
3年 |
1回目 |
4年目 |
■3.雇止め・クーリングの留意点
無期転換ルールの適用を避ける目的で、①無期転換申込権が発生する前に雇止めを
すること、②6ヶ月後、再度有期労働契約を締結するとの前提で、一旦雇止めをする
ことは、法の趣旨に反し、雇止めが無効とされる可能性があります。
なお、雇止めが有効か否かは、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通
算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無などを
総合考慮して個別事案ごとに判断されます。
■4.第2定年制等の検討
無期転換後の雇用の上限を定めることは、定年を除きできません。よって、必要性
に応じ、規定例のような第2定年制等を検討する必要があります。
▲規定例
(無期期転換社員の定年) 第○○条 無期転換社員の定年年齢は、無期転換時の年齢区分により、次のとおりとし、定年到達直後の賃金締切日をもって退職とする。 ① 60歳未満…60歳 ② 60歳以上65歳未満…65歳 2.前項第一号の無期転換社員が希望する場合には、改めて有期雇用契約を締結し、最大65歳まで再雇用する。 |
■5.無期転換の申込みは書面で
無期転換の申込みは口頭でも有効ですが、トラブルを防ぐためには、申込書の様
式を作成して対象者に周知し、書面で管理することが重要です。
■6.無期転換=正社員転換ではない。
無期転換ルールは、有期労働契約から無期労働契約に転換するものなので、必ずし
も正社員に転換するものではありません。
無期転換の方法としては、次表のとおり主に3タイプがあります。
①無期転換社員 |
契約期間のみを無期とし、労働条件は有期労働契約と同一 |
②多様な正社員 |
勤務地、職務、時間等限定社員に転換 |
③正社員 |
正社員に転換 |
また、無期転換後の労働条件については、後々のトラブルを未然に防ぐために
も、書面にて労働契約を交わしておくべきと言えます。
■終わりに
平成30年4月を前にして、無期転換ルールを避ける目的の雇止めやクーリングがニュースで取り上げられています。しかしながら、人手不足が加速する中、これらの会社に働く人は魅力を感じるでしょうか?無期転換ルールを前向きに考え、導入方法を検討する方がより現実的ではないでしょうか。
特定社会保険労務士 小高 東