▽労働契約法第7条(労働契約の内容と就業規則の関係)に関する判例
■日立製作所武蔵工場事件(概要)
就業規則に、36協定に基づき時間外労働をさせることがある旨の定めがあったが、
労働者が残業命令に従わなかったため、懲戒解雇した事例で、
秋北バス事件の判決の考え方を踏襲し、就業規則は合理的であり、
労動契約の内容となっているとし、懲戒解雇は権利濫用にも該当せず有効とされた。
★ポイント
1.上司であるA主任は、同年9月6日、Xに対し、残業をしてトランジスター製造
の歩留りが低下した原因を究明し、その推定値を算出し直すように命じたが、
Xは右残業命令に従わなかった。
2.会社は、後日Xに対し、始末書の提出を求めたが、このことにつき、
2度にわたり争いが生じ、警備員に付き添われて、ようやく退場した。
そこで、会社は、組合の意向も聴取した上で、それに従い、就業規則上の懲戒事由
(しばしば懲戒を受けたにもかかわらず、なお悔悟の見込がないとき)
に該当するとして、懲戒解雇した。
☆判決
「労働基準法第32条の労働時間を延長して労働させることにつき、
使用者が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定
(いわゆる36協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、
使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該36協定の範囲内で
一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させる
ことができる旨定めているときは、就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、
それが具体的労働契約の内容をなすから、就業規則の規定の適用を受ける労働者は、
その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働をする義務を負う
ものと解するを相当とする(秋北バス事件、電電公社帯広局事件)。」
「会社の時間外労働の具体的な内容は本件36協定によって定められているが、
本件36協定は、会社がXら労働者に時間外労働を命ずるについて、その時間を限定し、
かつ、(1 納期に完納しないと重大な支障を起すおそれのある場合)ないし
(7 その他前各号に準ずる理由のある場合は、実働時間を延長することがある)
の事由を必要としているのであるから、結局、本件就業規則の規定は合理的なもの
というべきである。」