メトロコマース事件(東京地裁 H29.3.23)
▽労働契約法20条(不合理な労働条件の禁止)に関する判例
■概要
東京メトロの売店販売員たち4人(60代、うち3人は7カ月〜10年8カ月勤務した後、定年退職済み)が同じ業務をしているのに、正社員と契約社員で※賃金格差がありすぎるとして、同一労働・同一賃金を求めて、賃金格差分や慰謝料など合わせて4560万円の支払いを求めて、東京地裁に提訴した。
※賃金格差
1.基本給、賞与に格差。住宅手当、永年勤続褒章、退職金なし。
2.早出残業手当の割増率が違う。
△不合理とは言えないとしたポイント
1.契約社員は売店業務だけをするが、正社員は売店以外の多様な業務についている。
2.正社員は配置転換や職種転換、出向を命じられることがあるが、契約社員はない。
3.正社員は、エリアマネージャーになることもあるが、契約社員がエリアマネー
ジャーに就くことはない。
4.正社員に対する賃金や福利厚生を手厚くし、有為な人材の確保・定着を図るという
人事施策上の判断には、一定の合理性が認められる。
☆判決
1.契約社員の比較対象となる正社員は、売店業務に従事する正社員のみならず,広く
被告の正社員一般の労働条件を比較の対象とするのが相当である。
→正社員と契約社員との職務内容および人事異動の範囲が大きく異なる。
2.早出残業手当以外の労働条件の相違は不合理ではない。
→早出残業手当の支払いを命じた。(1人4,109円)
3.労契法20条の不合理性については,労働者は,相違のある個々の労働条件ごとに、
不合理なものであることを基礎付ける具体的事実(評価根拠事実)についての主張
立証責任を負い,使用者は,当該労働条件が不合理なものであるとの評価を妨げる
具体的事実(評価障害事実)についての主張立証責任を負う。
不合理であるとまで は断定できない場合には、違反とはならない。
メトロコマース事件(東京高裁判決 H31.2.20)
▽労働契約法20条(不合理な労働条件の禁止)に関する判例
■概要
初めて退職金の格差を違法とし、元契約社員2人に計約220万円の支払いを命じた。
★ポイント
1.元契約社員2人は10年前後勤務しており、退職金のうち、長年の勤務に対する功労報償の
性格をもつ部分すら支給しないのは不合理である。
2.元契約社員3人のうち1人については、労働契約法20条施行前に退職したとして、一審同様
請求を退けた。
3.住宅手当に関しても、生活費補助の側面があり、職務内容によって必要性に差異はない。
4.勤続10年の正社員には支給される褒賞が支給されないことや、1人(契約社員)の早出残業
手当が正社員と割増率が異なることも違法な格差である。
5.基本給と賞与については、配置転換の有無など労働条件が異なるとして格差容認。
☆判決
1.退職金として、正社員と同じ基準で算定した額の少なくも4分の1(2人に45~49万円)。
2.住宅手当として3人に11~55万円。