(労働契約の成立)
第6条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金
を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
■コメント
「合意の原則」を確認。
▲労働契約の成立の要件としては、契約内容について書面を交付することまでは、
求められない。
(労働契約の成立)
第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が
合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、
労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。
ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と
異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、
この限りでない。
■コメント
就業規則と労働契約との法的関係について規定している。
●原則、
労働契約の内容=労働者周知の合理的な労働条件の就業規則。
▲ただし、労働契約締結後に就業規則を制定した場合には適用されない。
○また、労働契約の合意が優先する。(就業規則より条件がいい場合)
◇参考判例
就業規則変更による、定年制度改正について、不利益変更となる社員はいるが、
就業規則改定は合理的な理由があり、有効とした。
健康診断を受信拒否した社員の懲戒処分は有効とした。
36協定に基づく残業命令を拒否した社員の懲戒解雇は有効とした。
就業規則に基づき懲戒解雇をしたが、就業規則がその時点で周知されていなかった
ため、懲戒解雇は無効とした。
(労働契約の内容の変更)
第8条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更
することができる。
■コメント
労働契約の変更についての基本原則、「合意の原則」を確認。
▲変更内容について書面を交付することまでは求められない。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、
労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
ただし、次条の場合は、この限りでない。
■コメント
就業規則の変更により自由に労働条件を変更できるとの誤解から、
就業規則の変更による労働条件の変更に関する個別労働関係紛争も多い。
●第8条の労働契約の変更についての「合意の原則」に従い、労使の合意なく、
就業規則の変更により、労働条件を労働者の不利益に変更することはできない。
▲ただし書きは、第9条の原則の例外を第10条に規定した。
●労働者の不利益とは、個々の労働者の不利益をいう。
◇参考判例
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、
変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、
労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、
変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況
その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、
労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところ
によるものとする。
ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によって
は変更されない労働条件として合意していた部分については、
第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
■コメント
合意がなくても、「就業規則の変更=労働契約の内容の変更」となる場合を規定。
●変更後の就業規則の労働者への周知かつ、就業規則の変更が合理的な場合は、
例外として、合意がなくても、労働契約の内容も合わせて変更となる。
★合理性の判断基準
1.労働者が被る不利益の程度
2.使用者側の変更の必要性
3.相当性(内容自体、代償措置、一般的状況)
4.労働組合等との交渉の経緯
○労働契約で、就業規則の変更では変更されないといった合意特約があった場合は、
『条件の良い方』が優先して適用される。